猫がいた街

彼か彼女なのかわからないが、2年ほど前くらいから自分の通勤路の繁華街に子猫が住み始めた。元々、以前からいた交通事故で片腕を無くしたメス猫が4匹の子供を産み、4匹とも途中までスクスク育った。
1年ほど前から子猫達は2匹になった。通勤路のガールズバーで客呼び込みをする女性の足元にストーブが設置されており、次第に二匹の子猫達はそこで暖をとるようになった。やがて、ガールズバーの女性店員は猫に餌付けするようになり、子猫達も人間に安心し、飼い猫の様に人間にじゃれる様になった。たまに通る僕にも慣れ、一匹の猫は餌を持ってなくても通りがかると横を並んで歩き、途中まで見送ってくれた。

ある会社からの帰り道、道端に銀色の日除けスクリーンが落ちているのを見つけた。何かをくるんでいるようだった。スクリーンの端からは猫の尻尾がだらりと垂れており、嫌な予感が走るのを感じた。

銀色日除スクリーンを少し動かしても、尻尾 は動かない。恐る恐るスクリーンをめくってみると、一匹の子猫の骸が頭部から血を流している。交通事故なのだろうか、猫は死んでいた。

彼は確かに一昨日まではそこにいた。動き回る若い子猫の姿と骸の姿に、死の突然さを身体中に感じざるを得なかった。そこに死があり、運命があった。彼は何のために生まれてきたのか。


残されたもう一匹の子猫の哀しげな顔からは読み解く事ができなかった。


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